研究方法 / 品質管理
同じ値動きを
何度も数えないために
Strategy Labが公開前に行っている、サンプル品質チェックの説明です。
🧩 研究方法の説明
本サイトに掲載している全10研究の数値は、すべて修正後のものです。同じ重複チェックを10研究すべてに適用し、各研究のサンプル数を「元のバー数」と「重複除去後の件数」の両方で公開しています。
研究には、公開前の監査工程があります
Strategy Labの研究は、集計が終わった時点では公開しません。結論を出す前に、「この結果が間違っているとしたら、原因は何か」を洗い出す監査工程を置いています。
今回のGOLD研究でも、この工程でサンプルの重複を1件検出しました。どのようなものだったかを公開します。
実例:0.2ATRの初動を調べた研究
「小さな初動は、そのまま伸びるのか」を調べるテーマがありました。価格が0.20ATR動いた瞬間をイベントとし、その後の方向継続を見るものです。
集計の初期段階では、イベント数が非常に多く出ました。監査でこの数字を疑いました。理由は単純で、多すぎたからです。
何が起きていたか
このテーマのイベントは「価格が0.20ATR動いた瞬間」です。ところがGOLDの5分足では、これはほぼ毎バー成立します。
つまり——10時00分のイベントと、10時05分のイベントと、10時10分のイベントが、ほとんど同じ値動きを3回数えていました。
これは擬似反復(pseudoreplication)と呼ばれる、統計では古典的な失敗です。
なぜ重複を除く必要があるのか
信頼区間の幅は、おおよそサンプル数の平方根に反比例して縮みます。Nが36万件あれば、区間は極めて狭くなります。
その状態で計算すると、ただのノイズが「統計的に有意」に見えてしまいます。
サンプルが多いことは、良い研究の証明にはなりません。必要なのは「独立したサンプルが多いこと」であって、同じ現象を何度も数え直した数字には、その分の情報が入っていません。
どう修正したか
このテーマの観測期間は240分です。そこで、採用するイベント同士が240分以内に重ならないよう間隔を空けました。
240分という間隔は「効果が有意になるように選んだ」ものではありません。このテーマの観測期間そのものであり、検証を始める前から決まっていた数字を使っただけです。恣意的に選べる余地がないよう、あらかじめ固定してあります。
この処理をした結果
修正後、このテーマの結論は「差は確認できなかった」でした。
もし重複を含んだまま狭い信頼区間で公開していたら、存在しない優位性を報告していた可能性があります。この工程を置いている理由がここにあります。
この修正は、結論を出す前・公開する前に完了しています。掲載中の10研究はすべて修正後の集計に基づいており、うち6研究は「優位性を確認できなかった」、1研究は「仮説が反証された」という結果です。
他の研究にも同じ監査を適用しました
1件見つかった以上、他も疑うべきです。同じ重複チェックを10研究すべてに適用し、各研究のレポートには元のバー数と、重複除去後のイベント数の両方を記載しています。重複がどれだけ含まれていたかを、読む側が確認できる状態にしてあります。
あわせて、次の監査も全研究に実施しています。
- 先読み(未来の情報が紛れ込んでいないか)の構造的な検証
- 「効果が出ないはず」の条件で本当に出ないかの確認(Negative Control)
- 事前に決めた範囲でパラメータを動かしたときの安定性
- 特定の1年を除いても結論が変わらないかの確認
- 主要な数値の、別実装による再計算
なぜ公開するのか
研究の信頼性は「良い結果が出たこと」では決まらないと考えています。自分の集計を疑える工程があること、そしてそれを外から確認できる形で残すことだと考えています。
都合の悪い数字を消さずに書けるかどうかが、公開する研究の価値を決めると考えています。