GOLD DATA RESEARCH / R10
上位足と方向が一致すると
シグナルは強くなる?
「長い足のトレンドに逆らうな」という考え方を検証しました。結果は、慎重に読む必要があります。
❓ INCONCLUSIVE
30秒で分かる結論
- 今回調べたこと
- 5分足のシグナルに「1時間足のトレンドと同じ方向」という条件を足すと、結果が良くなるのかを調べました。
- 結果
- 今回は良いとも悪いとも断定しません。統計的な差は出たのですが、1分足では上下どちらに先に到達したか確定できないケースがあり、その扱いで結論が変わりました。
- つまり
- 「上位足を合わせると有利」とは、今回のデータでは確認できませんでした。ただし「不利」とも断定していません。
- 注意
- 数字の上では一致させた方が悪い方向に出ています。ただし前提が定まらないため、そう主張はしません。
この記事に出てくる用語(タップで開く)
- ATR(平均的な値幅)
- その時点で「ふつうどれくらい動くか」を表す目安です。相場が荒い時期と静かな時期を同じ物差しで比べるために使います。「0.5ATR動いた」は「ふだんの半分くらい動いた」という意味です。
- 対照群(Matched Control)
- 比較のために用意する「何も起きていない普通のバー」の集まりです。「イベント後に55%上がった」だけでは意味がなく、同じ時間帯・同じ曜日・同じ相場環境の普通のバーでは何%だったかと比べて初めて差が分かります。
正確な比較条件は研究ごとに異なります。各記事の「どう調べたのか」をご確認ください。 - 95%信頼区間
- 測った差が、どれくらいの幅でブレうるかを表したものです。この幅が0をまたいでいたら「差があるとは言えない」と読みます。例:[-1.9pt, +2.7pt] はマイナスにもプラスにもなりうるので、差は確認できません。
- p値
- 「差がない」と仮定したとき、今回と同じか、それ以上に極端な結果が出る確率です。小さいほど、偶然では説明しにくいことを意味します。
p値は「差がない確率」そのものではありません。また差の大きさも実用的な価値も教えてくれません。本研究ではp値だけで判断せず、必ず効果量と信頼区間を併記しています。 - 多重検定の補正
- たくさんの項目を同時に調べると、偶然「差があるように見えるもの」が必ず紛れ込みます。10テーマ調べれば、本当は全部無関係でも1つくらいは当たって見えます。その分を差し引く計算がこれです(本研究ではBenjamini-Hochberg法)。
- 統計的に有意
- 「偶然では説明しにくい差が見つかった」という意味です。「儲かる」「実用的な差がある」という意味ではありません。本研究では有意性・方向性・売買可能性を必ず分けて表示しています。
一致あり
5分足で上向きの勢い + 1時間足も上向き
→ 同じ方向を向いている
一致なし
5分足で上向きの勢い + 1時間足は下向き
→ 向きが食い違っている
- 比べたのは「一致した場合」と「一致しなかった場合」であること
- 同じ5分足シグナルの中での比較になっていること
別々のシグナルを比べているのではありません。同じシグナルを、上位足の向きで2つに分けて比べています。
- 形成途中の足の向きを使うと、未来の情報を先に見たことになること
ここを間違えると、非常に良く見えるが完全に無効な結果が出ます。構造として起きないようにしています。
なぜこのテーマを調べたのか
「上位足のトレンドに逆らうな」「マルチタイムフレーム分析をしろ」は、非常によく語られる考え方です。
短い足だけを見ると細かい上下に振り回されるので、長い足の方向に絞れば精度が上がる、という説明です。
理屈は分かります。では、実際に数字は良くなるのでしょうか。
どう調べたのか
「1時間足が上向き」と言うとき、その1時間足がまだ完成していないことがあります。まだ確定していない足の向きを使うと、未来の情報を先に見ていることになります。
今回は各上位足に「いつ確定したか」の時刻を持たせ、確定前の足は構造的に参照できない作りにしています。
結果 — そして、なぜ結論を出さなかったのか
数字だけ見ると、一致させた方がわずかに悪いという結果です。多重検定補正後のp値は 0.0000032 で、統計的にははっきりした差です。
しかし、ここでも1分足の限界に突き当たりました。
楽観的に数える
順番が分からない分を、一致あり側に有利に数えた場合 → 差なし
悲観的に数える
順番が分からない分を、一致あり側に不利に数えた場合 → マイナス
- 数え方の前提だけで、結論が「差なし」と「悪化」に分かれること
- Tickデータが2.9%しかなく、この前提を確定できないこと
どちらか一方を選べば断定できます。それをしないため、判定は結論保留としました。
解釈次第で「差なし」と「マイナス」に分かれます。そのため INCONCLUSIVE(結論保留) としました。
ここで「p値が小さいのだから、上位足一致は不利だと言えるのでは」と考えたくなります。
しかしp値が答えるのは「偶然ならこの差はどれくらい珍しいか」だけです。前提となるデータの読み方が2通りある状態では、いくらp値が小さくても結論は確定しません。
この結果を、ふつうの言葉にすると
「上位足を合わせれば良くなる」という改善は、今回のデータでは確認できませんでした。
むしろ悪化を示す数字が出ましたが、前提が定まらないため断定はしません。少なくとも「合わせれば当然良くなる」とは言えないということです。
この研究から分かること
- 上位足一致を加えるだけで自動的に精度が上がる、という前提は今回支持されませんでした。
- 条件を足して絞り込むと、サンプルは減り、選び方によっては結果が悪くなることもあります。「フィルターは多いほど良い」ではありません。
- 統計的に有意でも、結論が出せないことがあります。有意性と結論の確かさは別物です。
この研究だけでは分からないこと
- マルチタイムフレーム分析全般の否定ではありません。検証したのは「5分足の勢い+1時間足の向き」という1つの組み合わせだけです。
- 15分足・4時間足との組み合わせは事前登録の補助検証にとどめており、主要な結論には使っていません。
- Tickデータが十分にあれば、この保留は解消できる可能性があります。
次に読む
検証条件
🔒 Final Holdout(直近1年)は本研究では未使用です
この研究が気になった方へ
次に調べてほしいGOLDの定説はありますか。Discordでアイデアを募集しています。