GOLD DATA RESEARCH / R04
前日の高値・安値を抜けたら
そのまま伸びる?
ブレイクアウトの定番ですが、今回は「結論を出さない」という判断をしました。その理由を説明します。
❓ INCONCLUSIVE
30秒で分かる結論
- 今回調べたこと
- 前日の高値・安値を抜けたあと、抜けた方向に伸びやすいのかを調べました。
- 結果
- 結論を出しませんでした。同じ1分足の中で上下両方の価格に触れたケースがあり、どちらが先か確定できません。その扱い方で結論が変わってしまいました。
- つまり
- 「伸びる」とも「伸びない」とも、今のデータでは言えません。
- 注意
- これはデータの限界であって、ブレイクアウトが有効/無効という結論ではありません。
この記事に出てくる用語(タップで開く)
- ATR(平均的な値幅)
- その時点で「ふつうどれくらい動くか」を表す目安です。相場が荒い時期と静かな時期を同じ物差しで比べるために使います。「0.5ATR動いた」は「ふだんの半分くらい動いた」という意味です。
- 対照群(Matched Control)
- 比較のために用意する「何も起きていない普通のバー」の集まりです。「イベント後に55%上がった」だけでは意味がなく、同じ時間帯・同じ曜日・同じ相場環境の普通のバーでは何%だったかと比べて初めて差が分かります。
正確な比較条件は研究ごとに異なります。各記事の「どう調べたのか」をご確認ください。 - 95%信頼区間
- 測った差が、どれくらいの幅でブレうるかを表したものです。この幅が0をまたいでいたら「差があるとは言えない」と読みます。例:[-1.9pt, +2.7pt] はマイナスにもプラスにもなりうるので、差は確認できません。
- 検出力(サンプルは足りているか)
- 「もし差があったなら、それを見つけられるだけのサンプルがあるか」という考え方です。本研究では150件を下限とし、これを下回る場合は「差がない」ではなく「判断できない」と扱っています。
- Final Holdout(未使用データ)
- 検証にも調整にも一度も使っていない期間のデータです。本研究では直近1年分をそのまま残しています。新しい仮説を本当に確かめたいとき、「一度も見ていないデータ」でなければ意味がないためです。
- 事前登録
- データを見る前に、仮説・条件・判定基準をすべて決めて記録しておくことです。結果を見てから条件を変えられると、どんなデータからでも「発見」が作れてしまいます。本研究では10テーマ分を検証前に固定し、ハッシュ値で記録しています。
- ブレイク後、上下どちらの水準に先に届いたかで判定していること
- 値幅はATR(ふだんの値動き幅)で測るため、荒い時期も静かな時期も同じ基準になること
「上がったか下がったか」ではなくどちらに先に届いたかを数えています。
なぜこのテーマを調べたのか
前日の高値・安値は、多くのトレーダーが見ている水準です。「そこを抜けたら勢いがつく」という説明はよく見かけます。
一方で「抜けた瞬間が天井(だまし)」という説明も、同じくらいよく見かけます。
どちらが実際に多いのか、対照群と比べて確かめました。
どう調べたのか
「前日の高値」は前日が終わるまで確定しません。そこで各水準には「いつ確定したか」の時刻を持たせ、確定前のバーには絶対に渡らない作りにしています。ここを間違えると、まだ形成中の高値を使って未来を予測する形になり、きれいだが完全に偽の結果が出ます。
結果 — そして、なぜ結論を出さなかったのか
数字だけ見ると、わずかに継続寄りに見えます。しかし、ここに問題がありました。
1分足のデータは、その1分間の高値・安値・始値・終値しか持っていません。
ある1分の中で、上の目標にも下の目標にも触れていた場合、どちらが先だったのかを知る方法がありません。
この「順番が分からないケース」を、どう扱うかで結果が変わりました。
1分足に記録されているもの
その1分の 高値・安値・始値・終値 の4つだけです。上にも下にも触れたことは分かります。
記録されていないもの
どちらに先に触れたかという順番です。同じ1分の中の出来事は区別できません。
- 1分足のOHLCだけでは、到達の順番が決められない場合があること
- その扱い方次第で、同じデータから逆の結論が出せてしまうこと
Tickデータ(1回ごとの値動き)があれば順番は確定します。ただし今回、GOLDのTickは全期間の2.9%しかありません。
楽観的に数える
順番が分からない分を、仮説に有利な側に数えた場合 → 差あり
悲観的に数える
順番が分からない分を、仮説に不利な側に数えた場合 → 差なし
- 同じデータでも、数え方の前提だけで結論が反対になること
都合の良い側を選べば「差あり」と書けます。それをしないため、判定は結論保留としました。
結論が反対になってしまいます。都合の良い方を採用すれば「差あり」と書けますが、それは検証ではありません。
そこで判定は INCONCLUSIVE(結論保留) としました。
Tickデータがあれば解決できるのか(詳しく)
できます。Tickデータは1回1回の値動きを時刻付きで記録しているので、どちらに先に到達したかが確定します。
ただし今回、GOLDのTickデータは検証期間96か月のうち約2.8か月分(2.9%)しか手元にありません。しかもその期間は、将来の検証用に手をつけずに残している区間の内側にあります。
したがって今回は解決できません。分からないものを分かったことにはせず、そのまま保留としています。
この結果を、ふつうの言葉にすると
「前日高値・安値のブレイクは伸びる」も「伸びない」も、今回のデータでは判定できませんでした。
効かなかったのではなく、測りきれなかったという結果です。
この研究から分かること
- 少なくとも、はっきりした継続性が誰の目にも明らかなほど強い、ということはありませんでした。強ければ、解釈の違い程度では結論はひっくり返りません。
- 1日1〜2回しか起きないイベントのため、7年分でも1,417件です。細かく条件を切ると、すぐに判断できない件数になります。
- 1年ずつ抜いて再計算すると符号が変わりました。特定の年に依存している可能性があります。
この研究だけでは分からないこと
- ブレイクアウト全般の有効性。今回は「前日高値・安値」という1つの水準だけです。
- 終値で確定してからエントリーする、などの運用の違いは主要検証に含めていません。
- Tickデータが十分にあれば結論が出る可能性があります。それは今後の課題です。
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検証条件
🔒 Final Holdout(直近1年)は本研究では未使用です
この研究が気になった方へ
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