GOLD DATA RESEARCH / R08
「低ボラの後は大相場」
は本当か?
結果は、予想と逆でした。
🚨 ORIGINAL HYPOTHESIS REJECTED
30秒で分かる結論
- 今回調べたこと
- 値動きが小さくなった(ボラティリティ圧縮)後、大きく動くのかを調べました。方向ではなく値幅の予測です。
- 結果
- 元の仮説は支持されませんでした。むしろ逆でした。圧縮後60分の値幅は、条件を揃えた対照群より小さいという結果です。
- つまり
- 「静かになったから、次は大きく動く」とは言えませんでした。今回のデータでは、静かな後は静かなままの傾向がありました。
- 注意
- 「圧縮後は小さいまま」という逆向きの仮説は事前登録していないため、確定した発見としては扱いません。
この記事に出てくる用語(タップで開く)
- ATR(平均的な値幅)
- その時点で「ふつうどれくらい動くか」を表す目安です。相場が荒い時期と静かな時期を同じ物差しで比べるために使います。「0.5ATR動いた」は「ふだんの半分くらい動いた」という意味です。
- ボラティリティ
- 値動きの大きさ・激しさのことです。「ボラが高い」は大きく動いている状態、「低い」は静かな状態を指します。方向(上がる・下がる)とは関係ありません。
- 平均回帰
- 極端な状態が、時間とともに平均的な状態へ戻っていく性質です。ボラティリティにはこの性質があるため、静かな場面を集めれば、その後は何もしなくても「大きくなった」ように見えます。比較相手を正しく作らないと、これを「発見」と取り違えます。
- 中央値
- データを小さい順に並べたとき、ちょうど真ん中に来る値です。平均値と違い、極端に大きい数値に引っぱられにくいのが利点です。値動きのように「たまに極端な値が出る」データでは、平均より実態に近くなります。
- 効果量
- 差が「どれくらい大きいか」を表す数字です。p値が「偶然っぽいか」を答えるのに対し、効果量は「意味のある大きさか」を答えます。本研究ではCliffのdeltaなどを使っています(0が差なし、±1に近いほど大きい差)。
- 95%信頼区間
- 測った差が、どれくらいの幅でブレうるかを表したものです。この幅が0をまたいでいたら「差があるとは言えない」と読みます。例:[-1.9pt, +2.7pt] はマイナスにもプラスにもなりうるので、差は確認できません。
- 対照群(Matched Control)
- 比較のために用意する「何も起きていない普通のバー」の集まりです。「イベント後に55%上がった」だけでは意味がなく、同じ時間帯・同じ曜日・同じ相場環境の普通のバーでは何%だったかと比べて初めて差が分かります。
正確な比較条件は研究ごとに異なります。各記事の「どう調べたのか」をご確認ください。 - 事前登録
- データを見る前に、仮説・条件・判定基準をすべて決めて記録しておくことです。結果を見てから条件を変えられると、どんなデータからでも「発見」が作れてしまいます。本研究では10テーマ分を検証前に固定し、ハッシュ値で記録しています。
「ボラティリティ圧縮」とは、どういう状態か
直近の値幅が縮む短い期間の値動き幅が、長い期間の平均より小さくなった状態です。
↓
今回の判定短期ATR ÷ 長期ATR が0.70を下回った瞬間を「圧縮」としました。
↓
よく言われることエネルギーが溜まり、次に大きく動く、と説明されます。
↓
今回の問いその後の値幅は、本当に大きくなるのか?
この図で分かること
- 「圧縮」を感覚ではなく、数値の条件として固定していること
- 調べたのは方向ではなく値幅であること
見方のポイント
上がるか下がるかは問いません。どれだけ大きく動くかだけを見ています。
上がるか下がるかは問いません。どれだけ大きく動くかだけを見ています。
一般的なイメージと、今回の結果
一般的なイメージ
静かになる
↓
次に大きく動く
元の仮説は支持されませんでした
今回の結果
静かになる
↓
その後もやや小さめ
この図で分かること
- 予想と反対の向きの結果が出たこと
- 「差がなかった」ではなく「逆だった」であること
見方のポイント
この記事でいちばん伝えたいのはここです。定説が確認できなかったのではなく、反対の結果が出ました。
この記事でいちばん伝えたいのはここです。定説が確認できなかったのではなく、反対の結果が出ました。
なぜこのテーマを調べたのか
「値動きが小さくなった後は、大きく動く」——ボラティリティの圧縮からの拡大は、よく語られる考え方です。
スクイーズ、三角保ち合い、レンジ収縮など、呼び方は違っても同じ発想です。
今回はこれを方向の予測ではなく値幅の予測として定義し、確かめました。
どう調べたのか
対象GOLD(XAUUSD)
時間足5分足
条件短期ATR ÷ 長期ATR が0.70を下回った時点
比較同時間帯・同曜日・同ボラ環境、かつ長期ATRが同水準の対照群
確認その後60分間の最大値幅(向きは問わない)
この研究には、放置すると結論が真逆になる落とし穴があります。
ボラティリティには平均回帰性があります。静かな時間帯を集めれば、その後は何もしなくても「大きくなった」ように見えます。単に平均へ戻っているだけです。
比較相手を適当に選ぶと、その算術を測っただけで「圧縮後は大きく動く!」と結論できてしまいます。
ボラティリティには平均回帰性があります。静かな時間帯を集めれば、その後は何もしなくても「大きくなった」ように見えます。単に平均へ戻っているだけです。
比較相手を適当に選ぶと、その算術を測っただけで「圧縮後は大きく動く!」と結論できてしまいます。
そこで対照群は、時間帯・曜日・ボラ環境に加えて長期ATRが同程度の水準であることまで揃えました。これを外していれば、この研究は定説を「確認」して終わっていたはずです。
結果
-0.273中央値差(ATR単位)
[-0.326, -0.227]95%信頼区間
-0.154効果量 Cliffのdelta
6,963件サンプル数
信頼区間が0を含まず、すべて負の領域にあります。「差がない」という可能性は今回のデータでは支持されませんでした。ただしその差の向きは、当初の仮説とは反対でした。
条件を変えても符号は変わらなかった
結論が特定の設定に依存していないかを確認するため、10通りの条件で再計算しました。
観測期間30分 / 60分 / 240分すべて負
正規化ATR / 百分率 / 生ドルすべて負
圧縮指標ATR比 / レンジ比 / 実現ボラ比 / BB幅すべて負
測り方を変えても、結果の向きはすべて同じでした
30分先↓
60分先↓
240分先↓
ATRで正規化↓
%変動で測る↓
生のドル値幅↓
ATR比で判定↓
レンジ比で判定↓
実現ボラ比で判定↓
BB幅で判定↓
この図で分かること
- 10通りすべてで、圧縮後の値幅が対照群より小さかったこと
- 特定の測り方に依存した結果ではないこと
見方のポイント
↓は「圧縮後の方が小さい」を意味します。10個すべてが同じ向きである点が、この結果の主な根拠です。
↓は「圧縮後の方が小さい」を意味します。10個すべてが同じ向きである点が、この結果の主な根拠です。

特に重要なのは正規化方法を変えても符号が変わらなかったことです。割り算をしない百分率や生のドル値幅でも同じ向きでした。計算方法の副作用ではありません。
特定の1年だけの結果ではありません
2018↓
2019↓
2020↑
2021↓
2022↓
2023↑
2024↓
2025↓
この図で分かること
- 8年のうち6年で同じ向き(↓)だったこと
- 残り2年は逆向きだが、全体の傾向を覆すほどではないこと
見方のポイント
↓は「圧縮後の方が小さい」年です。ある1年が結論を作っているわけではありません。
↓は「圧縮後の方が小さい」年です。ある1年が結論を作っているわけではありません。
🔍 タップすると拡大표示できますこの結果を、ふつうの言葉にすると
「静かになったから、そろそろ大きく動くはず」という期待は、今回のデータでは裏付けられませんでした。
むしろ、静かになった後はしばらく静かなままの傾向が見られました。
この研究から分かること
- 「圧縮=次は大相場」という前提で待つ使い方は、今回のデータでは支持されません。
- 比較相手の作り方が結論を決めます。長期ATRを揃えなければ、同じデータから逆の結論が出ていたはずです。
- 10通りの条件で符号が変わらなかったことから、これは偶然の1設定ではないと考えられます。
この研究だけでは分からないこと
「圧縮後は静かなまま」と断定はできません。
検証前に固定した仮説は「圧縮後は大きく動く」でした。それが反証されたのが今回の結果です。
逆方向の「圧縮後は小さい値動きが続く」は事前に登録していません。結果を見てから思いついた説明を、同じデータで「確認済み」に格上げすることはできません。それを許すと、どんなデータからでも後付けの発見が作れてしまいます。
よってこれは探索的な観察として扱い、次の研究であらためて事前登録し、未使用のデータで検証します。
検証前に固定した仮説は「圧縮後は大きく動く」でした。それが反証されたのが今回の結果です。
逆方向の「圧縮後は小さい値動きが続く」は事前に登録していません。結果を見てから思いついた説明を、同じデータで「確認済み」に格上げすることはできません。それを許すと、どんなデータからでも後付けの発見が作れてしまいます。
よってこれは探索的な観察として扱い、次の研究であらためて事前登録し、未使用のデータで検証します。
- 値幅の話であり、方向については何も述べていません。
- 取引コストを含んでいません。
- 単一ブローカーの配信データです。
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検証条件
対象XAUUSD(GOLD)/ Exness 単一フィード
期間2018年8月〜2025年7月(約7年)
データ1分足 282万本 → 5分足グリッドで検証
時刻表記日本時間(JST = UTC+9)
イベント短期ATR ÷ 長期ATR が0.70を下回った時点(cooldown 12本)
サンプル6,963件(エピソード単位)
🔒 Final Holdout(直近1年)は本研究では未使用です
本研究は過去データに基づく統計分析であり、将来の価格変動や利益を保証するものではありません。本研究はバックテスト・デモ運用・実運用のいずれの成績でもなく、エントリー・エグジット・取引コストのモデルを実行していません。
この研究が気になった方へ
次に調べてほしいGOLDの定説はありますか。Discordでアイデアを募集しています。